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​講師インタビュー:K先生

2015年11月の記事です。K先生は、筑駒卒で、当時東京大学工学部4年でした。多忙な研究の合間を縫って、授業をしに来ています。研究内容がとても興味深いので、今回はその話をメインでお願いしました。

及:セサミで働いて4年目ですが、どうですか?

K:気付いたら、もうそんな経ってて。

及:最初来たときのこと、覚えてますか?

K:面接に来たときに、なんて落ち着きのない人だと思いました。もうだいぶ慣れましたが。

及:ひどい! 慣れただけ? 私は落ち着きましたか?

K:いや、全然変わらないですね。ほんとに最初は驚きました。面接で緊張してきたら、まさかこんなフランクだとは。

及:はぁ。では、最初に、筑駒⇒東大と進んだK先生を目標にしている生徒さんが多いので、そうなるためにはどうしたらいいのか、教えてください。

K:やっぱり、勉強勉強するよりは、遊びも挟みつつ勉強した方が、僕は効率いいと思いますね。小学生のときはやっぱり友達と遊びたいから、塾あまり行きたくないし。

及:そうなの?

K:行きたくないですよ、たまにさぼってました。

及:中学の時は? みんな優秀な状況で、競ったりとかあるの?

K:いや、全然ないです。試験の順位とか公表されなくて、競うとか本当に一切ないです。だから、中学の時は勉強しない人は本当に勉強しなくて、自分もそうで、部活やったりしていました。

及:学校面白かった?

K:すごく面白かったです。今思えば、すごく貴重なコミュニティーでしたね。

及:何が違うんだろう?

K:う~ん、何だろう、わからないな・・・やはり能力かな。

及:多分、努力で補える範囲を超えてると思う。入るべく人が入る。そういう世界の気がする。では話題を変えて、今東大の4年生ですが、研究室でやっていることを教えてください。

K:今、卒業論文を書くために行っている研究は、ざっくり言うと、建物に地震波を入力したときの、揺れのシミュレーションを行っていています。特徴としては、建物単体ではなくその下の地盤もまとめてモデル化して、地盤の下から地震波を入れて、建物の揺れを解析する、という研究を行っています。建物としては、今、原子力発電所をモデルとして使っています。

及:それって具体的な場所をモデルに解析しているの?

K:はい、現実の建物で具体的な場所をモデルにして行っています。今、やっていてわかったのですが、解析自体にはそれほど時間はかからないのですが、モデルを作るのにすごく時間がかかります。現実の建物(※実際の原子力発電所)をシミュレーションするために、細かく四面体に切っていくのですけれど。

及:四面体に切るの? 細かい単位として四面体とするの?

K:そうです、建物を細かいたくさんの四面体に区切って、1個1個の四面体の揺れを計算するんです。ある四面体の揺れを計算して、その四面体と頂点を共有する複数の四面体にその計算結果を入力して、更に頂点を共有する四面体にどんどん広げて計算していって。

及:四面体に区切らなければいけないの?

K:区切り方は四面体、五面体、六面体とか色々とあるのですが、今のモデルは四面体で区切って計算してます。このような計算方法を「有限要素法」というのですが、それを行うと、連続している建物を小さな要素に区切ることで、計算が可能になるのです。

及:そうか、空間だから小さな空間図形に。

K:区切らないと計算できないんです。で、その四面体の集合をメッシュと呼ぶのですが、そのメッシュを作るのが結構大変で。今他から頂いたデータを使ってやろうとしているのですが、そのデータでのメッシュだとうまくできないので、メッシュを切り直さないといけなくて、そこが大変です。

及:へぇ~!で、そもそもなんでその分野に進もうと思ったの? 地震の揺れが実際の原子力発電所に与える影響って、超ホットというか、とんでもなく重要で重大で。

K:成り行きを説明すると、2年生の夏に学科が決まって、最初は国際プロジェクト系に行きたいと思っていたのですが、そのあと学科の授業を色々と受けたら、ディスカッションとかが多くて。自分はディスカッションするよりも、数学を使ったものをやりたかったので、それで面白そうだなと思ったのが、今いる研究所です。

※この後、実際の原子力発電所に関することの概要を話してもらったのですが、極めて重要な内容なので、一部省略します。

K:特に、原子力発電所内の危険な場所の揺れが重要なのですね。今までも原子力発電所の揺れに関するシミュレーションはあったのですが、今までのものは、地盤と建物の非線形性という性質を、組み込めてないのですね。

及:というと?

K:線形性というのは、押すとそれに比例する力で戻ってくるもので、非線形性というのは、押した力と比例しない力で戻ってくるというもので、どちらによるものなのか、まだわかっていないのです。そこで、線形性だけでなく非線形性も含めてシミュレーションが行える計算システムが研究室にあるので、それを用いることによって、危険な場所の揺れが、非線形性によるものかどうかを調べようとしていて。

及:地盤と建物の関係が非線形性なのですか?

K:建物と地盤それぞれについて非線形性が表現できていないということです。僕もまだ詳しく勉強できていないのですが、おそらくどの材料にも影響の程度の差はあれど非線形性という性質が存在しているのでしょう。

この性質を組み込むとシミュレーションの計算コストが大きくなってしまい、これまで非線形性を考慮したシミュレーションは実現されなかったのですが、近年計算機ハードウェア及び高速ソルバー(計算に用いられるソフトウェア)の開発によりそれが可能になってきたそうです。

補足ですが、建物と地盤の境界についても実は改善すべき部分があります。今行っているシミュレーションでは、建物と地盤の境界条件を固着(完全にくっついており、離れない)として計算していますが、実際の現象を見てみると、揺れの中で両者が境界において離れてしまうということもあり、この境界条件の改善も課題の1つなようです。

及:何か、専門的なことは私には全然わからないけれども、すごいことやっているのですね。人類の将来がかかっている!

K:いい知見が得られるといいですけど、そんな大きなことではないですよ。それ卒業論文でやらないですよ、そこまでのものは。

及:でも、それに関わることではあるでしょ!面白い?

K:まぁ面白いですよ。数学的なところが好きなので。モデル作るためにはプログラミングもして。データの量がとても多すぎて、逐一手で計算なんてできないので、それをパソコンでやらせるためにプログラミングをして。他のところからもらったデータから、必要なデータを抽出するという作業も、プログラムを書いて、パソコンに抽出させるのです。

及:自分で逐一プログラムを書いていかなければならないのね。プログラミングって大学へ入ってから始めたの?

K:いや、研究室入ってからです。大学入ってからちょいちょいやってはいたのですが、色々な言語だったので、もはや初心者の状態で。

及:じゃあ、いろんな勉強しなきゃいけなくて、大変?

K:プログラミングと有限要素法の勉強で、1か月近くかかって。そのあと、シミュレーションを動かすのが最初は難しいので、それを動かす練習をして、そのあと、外部からもらったデータを入力できるように作り変えて、それでようやく準備が終わって、今本題に入ったところです。モデル作りに今苦労してますけど、解析することがメインなので。

及:すごいですね!本当にすごい!是非、良い知見を得てください。

では最後に、こじつけっぽいけれど、セサミの生徒さんに一言。やっぱり勉強してきたから、それだけ重要でディープでホットな研究ができるのですよね?

K:勉強っていうか、まぁ、義務感でやってないからな。

及:何感でやっているの?

K:何だろう…。まぁ、嫌いな科目は義務感でやってましたけど、好きな科目だと、問題解けないと悔しいから解きたいというか、知りたいっていうか。試験の時でも、問題が解けないと引っかかるというか、それが嫌だったから。

及:わかりました。ありがとうございます。研究頑張ってください。

K:頑張ります!

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