ご挨拶

 セサミ数学スクールは、2010年11月に東京都町田市に開校した数学専門塾です。コロナ前までは小学生から高校生までが在籍し、先取り学習、数学検定対策、受験対策、学校の試験対策、英語で数学など様々な目標に向けて、生徒さんたちはみな3時間、頑張って勉強しています。

​ コロナウィルスの影響もあり、2020年4月からはZOOMを用いた双方向対話型オンライン授業に切り替えました。それに伴い、対象学年は中高生のみに変えました。小学生がPCの前で3時間じっとしているのは、どうしても無理があるためです。可愛らしい小学生の生徒さんたちが、キャッキャ、キャッキャと楽しみながらも真剣に算数に打ち込む姿をもう見れず、中学受験や算数オリンピック予選突破の結果をドキドキドキドキして待ち焦がれることも、もうなくなるのだと思うと、一抹の寂しさ、いや十抹の寂しさを感じます。

 

 しかし、元小学生だった生徒さんたちは、いまや、充実した多忙な生活を送る中高生となりました。中高生の皆さんにとっては、オンライン授業はとても好評で、今ではほとんどの生徒さんが通塾よりもオンラインの方が便利で良いと言っています。え~、そうだったの!?とびっくりしましたが、学校の勉強や部活で多忙な皆さんにとって、通塾の時間がかからないメリットはとても大きいようです。また、オンライン導入後は新たに、夜22時過ぎまでの授業を導入しました。この時間帯が可能なのは、オンラインならでこそのメリットです。

 通塾だろうとオンラインだろうと、「3時間、数学を解いて解いて解きまくれ!」というセサミのスローガン(?)は変わりません。3時間授業というと、スパルタ的な授業を想像される方もいるようなのですが、全然そんなことはありません。だって、嫌々勉強したって、無理強いされて勉強したって、無駄じゃん、効率悪いよ、だったら勉強なんてしないで遊んだ方がずっといい!と思います。

 セサミは生徒さんたちの自主性と熱量とに支えれられている。それだけです。私が「バカボンのパパ」で、皆さんが「はじめちゃん」みたいな(※古いなぁ、伝わらないだろうなぁ・・・)

​ さて、セサミは小さな小さな塾ですが、その小ささとは裏腹に、大きな成果を遂げてきました。開塾2年目で東大合格者を輩出したり、算数オリンピックや広中杯の予選会場となり好成績をおさめたり、英語で算数・数学を勉強して海外の学校に合格したり、その他色々。すべての生徒さんたちが、自分の目標に向かって懸命に取り組み続けています。優秀な講師たちにも恵まれ続けています。開校当初には想像もしませんでした。

 更には2021年6月、セサミの元生徒さんが、国際情報オリンピックで第6位になるという大成果を成し遂げました。私の想像を遥かに超えた状況です。この先、世界を変革していくようなことを成し遂げていくのかもしれません。そう考えると、身震いするくらいもの凄いことだと思います。(※ちなみにこの生徒さんは、中学3年までずっと海外で暮らしていたので、春休みと夏休みの帰国時にセサミで数学を勉強し、中学3年で大学数学まで制覇してしまいました。この生徒さんは高校に入ってからプログラミングを独学で習得したので、この大快挙は100%生徒さんの能力努力その他諸々によるもので、セサミは全く関係ないのです、はい)。

 

 さて、この生徒さん及びお母様か上記の成果を書いていいとの承諾をいただき、「この生徒さんと接して学んだことをこの場で皆さんにお伝えすることは、それはそれで意義があるのではと考え、(中略)この夏、複数回に分けて書いていこうと思います」と書いておきながら、早9月も終わろうとしているこの現実・・・。

 

 で、色々なことを書こうとして、散々悩みました。遺伝か環境か、才能か努力か。点数や順位や偏差値にこだわるべきか否か、ネットでググれば有り余る知識をゲットできる今日において暗記重視の学習の意義は何か、AIが脅威の進歩を遂げている現在において学習する意義は何か。書いては消し書いては消し、を繰り返し、そもそもなんで勉強するのだろう? いろんなことがわからなくなってしまい、迷走しまくってました。

 デカルトのように、種々の事柄を懐疑し続け、それでもなお、言えることは何だろう?

 「そんな中、1点だけ消されずに残り続けたことがあります。それは何か」と書いたのですが、それでもまだしっくりこなくて。なんでしっくりこないのだろう? それはたぶん、1つではなくて2つあるからではないか、と思いました。

 1つは、自分の興味のあることに没頭するということです。

 上述の生徒さんが海外のオリンピック問題の難問に挑み、考え続けた末、「あ、これは中国剰余定理で解ける!」ときらめく笑顔で言っていた情景が、今でも脳裏にくっきりと焼き付いています(私の脳内でカラー音声付で何回でも再生できる!)。わかりにくかったら、新種の虫を発見した虫君の姿を想像してみてください、そんな感じです。好きなことにきらきらと没頭できるって、本当に羨ましいです。(※「虫君」というのは昆虫が大好きなセサミの生徒さんです。)

 これまた印象的でくっきりと覚えているのが、その生徒さんが小学生だったとき、1930年代くらいに書かれた論理学の本(※かなりマニアックな本)をセサミの本棚で見つけ、「あ~、これを探していたんだ!」と大喜びしていた姿です。え~~、小学生でこんな本読むなんて、と感嘆し、景仰しました(※これもわかりにくかったら、探していた虫を発見して狂喜している虫君の姿を想像してみてください)。好きなことを極める力は、何て強いのだろう。

 だがしかし、ここでまた悩んでしまったのです。というのは、「特に好きなこととかありません。夢も目標もよくわかりません。それを探すために大学に行こうと思うのですが」という生徒さんが結構多く、「好きなことを極めろと言われても、そもそも好きなことがないのですが・・・」という場面が少なからずあるからです。こういう場合は、どうしたらいいのだろう? 大学に入るためだけに勉強をするの? いや、違う、それだけではない。ここで、2つめの登場です。

 おそらく皆さんがこの先、大学生になったり社会人になったりしたときに、「こういったことがしたいな」とか「この分野で活躍したいな」って思えることが出てくるでしょう。その時に、数学を勉強することで培われた、新たな事柄を学び、深く考察し、試行錯誤しながら、何らかの結論や結果を導いていくという経験が大いに役に立つのです。数学を学ぶということは、論理的な思考を組み立てていく訓練であり、12年間学び続けた蓄積は、大きな糧になるのです。

 私は、ぐるぐる悩みあぐねいた末、結局は元の基本に立ち戻ってきたのでした。

 セサミ数学スクールの“セサミ“は、『アラビアン・ナイト』の中の「アリババと40人の盗賊」という物語に出てくる「開けゴマ Open Sesame!」というセリフからとりました。

 "Open Sesame"には、「望みをかなえてくれる魔法の鍵」という 意味があるそうです。「魔法の鍵」を手に入れる方法はただ一つ。自分の頭で考えながら、地道に着実に勉強し続けることです。そのような習慣を身につけてほしい、というのが私の願いです。そうすることではじめて、思考や創造の領域に入っていけるからです。

 みなさんがこの先進むであろう様々な分野で、「魔法の鍵」を片手に、世界を切り開いていってください。数学が得意の人も、得意でない人も、勉強し続ければ必ず「魔法の鍵」を手に入れることができます。そして皆さんが活躍するそれぞれの分野において、「魔法の鍵」は力を発揮するのです。

 開校してもうすぐ11年目を迎えます。コロナ後、世界の在り方は変わり、また日本の経済状況は悪化していくとの見通しが少なくない状況です。しかしそのような中においても、私は明るい未来を夢見ることができる。なぜだろう、それは日々、皆さんが一生懸命に勉強する姿と接しているからです。数学・論理的思考という「魔法の鍵」を片手に、果敢に我が道を進み、各々の領域で奮闘する皆さんの姿を夢見ることができるからです。

 一生懸命勉強する生徒さんたち、人間のできた保護者の皆様方、有能で信頼のおける講師たちに恵まれて、これまで何とかやってこれました。本当にありがとうございます。感謝の言葉しかありません。ありがとうございます。​皆さん、どうかこの先も、私を圧倒し続けてください! ​セサミ数学スクール 及川えり子

講師インタビュー:H先生:2020年9月

セサミ講師で東京大学理科一類2年のH先生のインタビューです。大学受験のことや、セサミの講師として感じていること、大学生活などについてに話をうかがっていきます。

 

大学受験のこと

 H先生は筑駒の中3の時に、セサミの体験授業に来ました。今でも鮮明に覚えています。

「学校の数学の試験で、せめて平均点以上取りたい。いつも時間が足りなくなる」と言っていたので、試験対策として2次関数の問題を解いてもらいました。その解法を見て、私は驚きました。

おそらく学校のクラスメートたちは、塾で難問の解き方のパターンを習得していたのだと思います。独学だったH先生は、解法パターンを全く知らない状態で、毎回独自の解法を生み、ゴリゴリと解いて正解を導いていたのです。すごいなぁととても驚きました。

 入塾後は、筑駒の先輩で東大院生だったK先生や、東大生のM先生、O先生が指導してくださり、H先生は大学入試へと突入していったのでした。

 

及:大学受験では、私もM先生もO先生も全員、H先生が落ちることは考えられないと思ってた。

 

H:そうなんですか?

  

及:うん。でも本人の前でそれを言って気が抜けちゃったらいけないから言わなかったけど、講師全員が、東大入って当然の人材と考えていて、受かることしか想像できなかった。

 

H:いやぁ〜。僕はむしろ、結構あやしいところにいるなと思っていて、模試でもそれほど良い成績ではなかったし、筑駒でも半分くらい東大に行くのだけど、結構シビアなラインだったので、楽観視はできていなかったんですよ。なので、受かったときは普通に喜びました。

  

及:そうだったのか。知らなかった。私や他の先生たちは、別の視点で見ていたと思う。些細な点数では判断しないで、能力やメンタルなどを俯瞰して捉えていた。

  

H:それは受験生の立場からはわからないことですね。でも僕は、ぶっちゃけ落ちても何とかなるやろと思っていたので、試験のときは、力が入りすぎることもなく緩めすぎることもなく、ちょうど良い緊張感を持って臨めました。

 

セサミの講師として

林先生は、高校2年生の時から、セサミのイベント授業などでアルバイト講師をしていて、生徒兼講師という華麗な経歴(?)の持ち主です。

大学合格と同時に、当時私が執筆していたプログラミング本『Python超入門』のチェックに携わってくれました。文章やコードの間違いを指摘するだけでなく、私が気づかなかった事項を深く調べて教えてくれたり、私が構成で何度も行き詰まった時には突破口となる案を出してくれたりと、こんなにも信頼できる方にチェックしてもらえて、もう本当に感謝感謝でありました。

そして4月からはセサミ講師として授業を担当し、1年半が経ちました。

 

及:授業やっててどうですか? 面白いですか?

  

H:「あ、なるほど!」という生徒さんからの反応があると、一番うれしいですね。はっきりと口に出さなくても、「あ!」みたいな反応があると、今わかってくれたんだなって感じがして、いいですね。

 

及:逆に、大変なところってありますか?

 

H:わかっていることと、わかっていないことの境目が見つけにくいときは大変ですね。あと、僕が問題をすぐにわからなかったときは、焦りますね。

 

及:へぇ〜。

 

H:そういうときは必死になって考えます。なかなか頭を使う機会となっていいですね。

 

大学の授業や試験について

及:いまはコロナで大学の授業はオンラインになっていますが、1年生のときは通常の対面授業でしたね。1年生のとき、授業は大変でしたか?

 

H:はい。特に試験のときが大変ですね。周りは皆よくできるので、こちらも相当頑張らないと、試験でまともな成績が取れないというプレッシャーがあります。真面目に試験対策をしなければならないんです。

 

及:そうか。

 

H:みんな勉強するのが当たり前なので、自分がやっているくらいのことは周りも皆やっているのでは、と思い始めると、本当に大変で。

 

及:多くの人がそういう想いを抱えて頑張っているんだ。すごい環境ですね。

 

H:みんな、口ではできない、何もわからないって言うけれど、実際はできるんですよ。こわいですねぇ。

 

及:東大は入るのも大変だけど、入ってからもそんなに勉強してるなんて、すごいなぁ!

 

H:東大を志望する人がいたら、入ってからの身の振り方というのも考えた方がいいですね。大学入学後も努力の継続が必要です。

 

サークル活動について

及:サークルは何をやってますか?

 

H:1つは街歩きのサークルで、日本の様々な場所に行って、現地の地形や歴史とかを調べたりします。地理が好きな人が集まって。

 

及:どこが面白かった?

H:色々ですが、一番楽しかったのは、今年の2月の初めの頃、コロナの直前の頃に行った、広島の尾道です。尾道は、山と山の間に海があって、橋がかかっていて、展望がとてもきれいで、坂道や古い家屋が織り成す景色が何とも言えない趣きがあって、本当に尾道はいいところでした。

 

及:へぇ〜。瀬戸内は島がいっぱいあって、面白いですよね。旅先では調査とかするんですか?

H:毎回企画者がリーダーとなって先導していくのですが、企画者の人が前もって歴史などを調べておいて、当日皆に説明するんです。

及:毎月行くんですか?

H:企画自体はほぼ週1回あります。行くも行かないも自由で、全部で10回くらい行ったかな?

及:そんなにあるんだ。面白そう! で、もう1つ別のサークルにも入ってましたよね?

H:大学生協の学生委員会に入っています。

及:何をするの?

H:主な活動としては、生協の冊子を作成します。生協の宣伝ですが、割と自由に紙面を作ることができるので、どこぞこに行ってみた、とか、こんな企画にチャレンジしてみた、とか。

デザインとかも含め、全てを一から作っていくので、楽しいです。

及:あと、趣味で競技プログラミングもやっているのですよね? それって何?

H:ざっくり言うと数学オリンピックのプログラミング版のようなものです。決まった時間で問題を解いていきます。

及:大学生が対象?

H:いいえ、誰でもできます。年齢制限なしです。生徒の皆さんもチャレンジできるので、興味のある人は是非どうそ!と宣伝させてください。

 

大学の学部・学科について

及:H先生は地理も得意で、あ、そうだ、話がずれますが、よく考えたら、最初文系でしたよね。覚えてます? 高1まで文系で。

H:あ〜、そんなこともありましたね。もうすっかり、理系マインドですね。

及:そうなのか。最初は、地理が好きだから東大の文2を目指すと言ったけれど、あまりに数学ができることと、当時勝島先生がいた工学部社会基盤学科で都市計画ができるから、私は理1を勧めたんですよ。

H:あのときで進路が決まりました。先日、無事に社会基盤学科へ入ることが決まりました。

及:社会基盤学科はどのようなことを学ぶのですか?

H:社会の基盤という名が示す通り、インフラなどが多いです。国全体のインフラをどうしていくか、とか。

及:交通とか、電力とか、鉄道とか、全体的にやるような感じ?

H:はい。多岐に渡ります。その中でも、僕は、インフラの最適化をやりたいと考えています。

及:インフラの最適化??? よくわからないのですが、どのようなことでしょうか?

H:例えば、道路を作る場合、道路を作る場所、交通量、渋滞の緩和、利益、事故が生じた場合の迂回経路とかを総合的に考えて、最適なプランを導出したりします。ハード面で新しい道を作るというのもありますが、ソフト面では、道路の料金を上げるとどのような影響が出るかとかを考えたりします。

及:それで色々なシミュレーションを作って、色々な要素を兼ね合わせて、どれが最適かどうかを考えていく?

H:はい。そのようなことに興味があります。

及:私はこの先、地震とかが起きてしまったらとよく考えてしまい、地震の後とかに設計し直していくことができますね。

H:はい。でもその前に、地震に備えるということもできると思います。

及:備える?

H:はい、例えば避難のシミュレーションとかもあって、犠牲を最小にする方策を考える研究所もあるようです。

人やものの流れを、いかに上手くするかがテーマで、避難や渋滞の緩和とかもありますし、支援物資の輸送の効率化なども研究できると思います。

及:そこで数学やプログラミングを役立てることはできそうですね!

H:そうですね。セサミで数学を学び、『Python超入門』に関わったことでプログラミングが趣味になり、セサミで関わったことがこの先の研究につながってくるんですよ。

及:ありがとうございます。では、最後に、セサミの生徒さんたちに一言お願いします。数学頑張るといいことありますか?

H:はい、いいことありますよ。僕がやっている競技プログラミングで数学が生きてきます。このプログラミングはシミュレーションに役立てることができます。プログラミングでなくても、数学は色々な分野の土台となるので、将来どの分野に進むにしても、数学をきちんとやっていくといいと思います。

及:きれいにまとめていただき、ありがとうございます。頭脳と技術とを持っているからこそ、複雑な社会設計が可能となるのですね。

 

最後に及川の感想

 H先生の強みは、物事に徹底的に真面目にすごいパワーで取り組むことです。例えば、高校生の夏休みのとき、洋書を1冊読み通す、という宿題が出されると、読むだけでなく全訳までしてしまいました。これ、普通、できないですよ。1冊全訳ですよ!!!

 また、高校の文化祭で食品関係の責任者になったので、文化祭の前後含めて4日間も渋谷のカプセルホテルに泊まり込み、何かあったらすぐに動けるように準備していました。その徹底ぶりには、驚きです。

 H先生は皆の前では穏やかでとても優しい先生ですが、内に秘めた能力・努力・パワーはものすごいのであります。H先生のような人が、この先の日本のインフラに関わってくれると思うと、私はうれしくてうれしくて、飛び回りたくなってしまいます!

​講師インタビュー:K先生:2015年11月

2015年11月の記事です。K先生は、筑駒卒で、当時東京大学工学部4年でした。多忙な研究の合間を縫って、授業をしに来ています。研究内容がとても興味深いので、今回はその話をメインでお願いしました。好評なので復活させました。

及:セサミで働いて4年目ですが、どうですか?

K:気付いたら、もうそんな経ってて。

及:最初来たときのこと、覚えてますか?

K:面接に来たときに、なんて落ち着きのない人だと思いました。もうだいぶ慣れましたが。

及:ひどい! 慣れただけ? 私は落ち着きましたか?

K:いや、全然変わらないですね。ほんとに最初は驚きました。面接で緊張してきたら、まさかこんなフランクだとは。

及:はぁ。では、最初に、筑駒⇒東大と進んだK先生を目標にしている生徒さんが多いので、そうなるためにはどうしたらいいのか、教えてください。

K:やっぱり、勉強勉強するよりは、遊びも挟みつつ勉強した方が、僕は効率いいと思いますね。小学生のときはやっぱり友達と遊びたいから、塾あまり行きたくないし。

及:そうなの?

K:行きたくないですよ、たまにさぼってました。

及:中学の時は? みんな優秀な状況で、競ったりとかあるの?

K:いや、全然ないです。試験の順位とか公表されなくて、競うとか本当に一切ないです。だから、中学の時は勉強しない人は本当に勉強しなくて、自分もそうで、部活やったりしていました。

及:学校面白かった?

K:すごく面白かったです。今思えば、すごく貴重なコミュニティーでしたね。

及:何が違うんだろう?

K:う~ん、何だろう、わからないな・・・やはり能力かな。

及:多分、努力で補える範囲を超えてると思う。入るべく人が入る。そういう世界の気がする。では話題を変えて、今東大の4年生ですが、研究室でやっていることを教えてください。

K:今、卒業論文を書くために行っている研究は、ざっくり言うと、建物に地震波を入力したときの、揺れのシミュレーションを行っていています。特徴としては、建物単体ではなくその下の地盤もまとめてモデル化して、地盤の下から地震波を入れて、建物の揺れを解析する、という研究を行っています。建物としては、今、原子力発電所をモデルとして使っています。

及:それって具体的な場所をモデルに解析しているの?

K:はい、現実の建物で具体的な場所をモデルにして行っています。今、やっていてわかったのですが、解析自体にはそれほど時間はかからないのですが、モデルを作るのにすごく時間がかかります。現実の建物(※実際の原子力発電所)をシミュレーションするために、細かく四面体に切っていくのですけれど。

及:四面体に切るの? 細かい単位として四面体とするの?

K:そうです、建物を細かいたくさんの四面体に区切って、1個1個の四面体の揺れを計算するんです。ある四面体の揺れを計算して、その四面体と頂点を共有する複数の四面体にその計算結果を入力して、更に頂点を共有する四面体にどんどん広げて計算していって。

及:四面体に区切らなければいけないの?

K:区切り方は四面体、五面体、六面体とか色々とあるのですが、今のモデルは四面体で区切って計算してます。このような計算方法を「有限要素法」というのですが、それを行うと、連続している建物を小さな要素に区切ることで、計算が可能になるのです。

及:そうか、空間だから小さな空間図形に。

K:区切らないと計算できないんです。で、その四面体の集合をメッシュと呼ぶのですが、そのメッシュを作るのが結構大変で。今他から頂いたデータを使ってやろうとしているのですが、そのデータでのメッシュだとうまくできないので、メッシュを切り直さないといけなくて、そこが大変です。

及:へぇ~!で、そもそもなんでその分野に進もうと思ったの? 地震の揺れが実際の原子力発電所に与える影響って、超ホットというか、とんでもなく重要で重大で。

K:成り行きを説明すると、2年生の夏に学科が決まって、最初は国際プロジェクト系に行きたいと思っていたのですが、そのあと学科の授業を色々と受けたら、ディスカッションとかが多くて。自分はディスカッションするよりも、数学を使ったものをやりたかったので、それで面白そうだなと思ったのが、今いる研究所です。

※この後、実際の原子力発電所に関することの概要を話してもらったのですが、極めて重要な内容なので、一部省略します。

K:特に、原子力発電所内の危険な場所の揺れが重要なのですね。今までも原子力発電所の揺れに関するシミュレーションはあったのですが、今までのものは、地盤と建物の非線形性という性質を、組み込めてないのですね。

及:というと?

K:線形性というのは、押すとそれに比例する力で戻ってくるもので、非線形性というのは、押した力と比例しない力で戻ってくるというもので、どちらによるものなのか、まだわかっていないのです。そこで、線形性だけでなく非線形性も含めてシミュレーションが行える計算システムが研究室にあるので、それを用いることによって、危険な場所の揺れが、非線形性によるものかどうかを調べようとしていて。

及:地盤と建物の関係が非線形性なのですか?

K:建物と地盤それぞれについて非線形性が表現できていないということです。僕もまだ詳しく勉強できていないのですが、おそらくどの材料にも影響の程度の差はあれど非線形性という性質が存在しているのでしょう。

この性質を組み込むとシミュレーションの計算コストが大きくなってしまい、これまで非線形性を考慮したシミュレーションは実現されなかったのですが、近年計算機ハードウェア及び高速ソルバー(計算に用いられるソフトウェア)の開発によりそれが可能になってきたそうです。

補足ですが、建物と地盤の境界についても実は改善すべき部分があります。今行っているシミュレーションでは、建物と地盤の境界条件を固着(完全にくっついており、離れない)として計算していますが、実際の現象を見てみると、揺れの中で両者が境界において離れてしまうということもあり、この境界条件の改善も課題の1つなようです。

及:何か、専門的なことは私には全然わからないけれども、すごいことやっているのですね。人類の将来がかかっている!

K:いい知見が得られるといいですけど、そんな大きなことではないですよ。それ卒業論文でやらないですよ、そこまでのものは。

及:でも、それに関わることではあるでしょ!面白い?

K:まぁ面白いですよ。数学的なところが好きなので。モデル作るためにはプログラミングもして。データの量がとても多すぎて、逐一手で計算なんてできないので、それをパソコンでやらせるためにプログラミングをして。他のところからもらったデータから、必要なデータを抽出するという作業も、プログラムを書いて、パソコンに抽出させるのです。

及:自分で逐一プログラムを書いていかなければならないのね。プログラミングって大学へ入ってから始めたの?

K:いや、研究室入ってからです。大学入ってからちょいちょいやってはいたのですが、色々な言語だったので、もはや初心者の状態で。

及:じゃあ、いろんな勉強しなきゃいけなくて、大変?

K:プログラミングと有限要素法の勉強で、1か月近くかかって。そのあと、シミュレーションを動かすのが最初は難しいので、それを動かす練習をして、そのあと、外部からもらったデータを入力できるように作り変えて、それでようやく準備が終わって、今本題に入ったところです。モデル作りに今苦労してますけど、解析することがメインなので。

及:すごいですね!本当にすごい!是非、良い知見を得てください。

では最後に、こじつけっぽいけれど、セサミの生徒さんに一言。やっぱり勉強してきたから、それだけ重要でディープでホットな研究ができるのですよね?

K:勉強っていうか、まぁ、義務感でやってないからな。

及:何感でやっているの?

K:何だろう…。まぁ、嫌いな科目は義務感でやってましたけど、好きな科目だと、問題解けないと悔しいから解きたいというか、知りたいっていうか。試験の時でも、問題が解けないと引っかかるというか、それが嫌だったから。

及:わかりました。ありがとうございます。研究頑張ってください。

K:頑張ります!

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